仙台高等裁判所 昭和33年(う)386号 判決
原判決の挙示する証拠によれば、原判示事実すなわち被告人は輪タク業を営んでいたものであるが、昭和三三年五月二八日午後一一時すぎ頃、仙台市仙台駅前市電通名掛丁附近において、武田諄から「近くで女のいるところを知らないか、一度行つたことのある亀井商店の裏に連れて行つてくれ、一、五〇〇円で遊びたい」との申出を受けてこれを承諾し、同人を輪タクに乗車させて同市茂市ケ坂通一四番地売春婦渡辺としこ方にいたり、同女に対し武田の意思を伝え、同女をして右対価をもつて武田を売春の相手方とすることの意思決定をなさしめたことは、これを認定するに十分である。被告人が売春をするとしことその相手方となる武田との間に介在して売春の対価の決定等についてあつ旋したからこそ、右証拠上明らかであるとおり被告人がとしこを介し輪タク代一〇〇円の支払を受けたほか、としこから世話料五〇〇円を受け取つたわけであつて、所論のように被告人が武田の依頼によつて同人をその指定するとしこ方まで運送したにすぎないものと認めることはできない。もつとも、右証拠によれば、としこは売春の常習者であり、武田も輪タクに乗ろうとする時にはすでにその相手方となろうとする意思を持つていたことが現われる。しかし、両者間において売春の対価について諒解が成立しなければ最終的な売春契約は成立しないのであるから、その対価の決定についてあつ旋する行為は、売春契約を成立させるうえにおいて重要な意義を有するものというべきである。而して、売春防止法六条一項にいわゆる売春の周旋とは、売春をする者とその相手方となる者との間で売春行為が行われるように仲介するいつさいの行為を指称し、売春をする意思を有する特定の者とその相手方となろうとする特定の者との間に介在して売春の対価の決定についてあつ旋する行為も売春の周旋にあたるものと解するのを相当とする。したがつて、被告人の前掲所為は売春を周旋した罪を構成するものといわなければならないから、原判決が右所為に対し右六条一項の罰則を適用処断したのは正当である。
(裁判長裁判官 門田実 裁判官 山田瑞夫 裁判官 有路不二男)